※本記事は一般的な情報提供を目的としています。法的助言ではありません。個別事情は専門家にご確認ください。
フリーランス案件で、地味に悩ましいのがここです。
小さな仕様変更・追加要望が積み上がって、無料サービス化する問題。
「これくらい軽微だから」
「ついでにやっておいて」
「今週中に反映できる?」
この言葉が出た瞬間、フリーランス側は“断るか、受けるか”の二択に追い込まれます。
しかし、現場を見ていると、揉め事の多くは悪意があるわけではなく、「合意がない」「記録がない」といった曖昧な状態のまま進むことが原因です。
“脱おふたりさま”の文脈では、地雷は単価ではなく単一依存。
案件元の言い分に合わせるしかない状態(比較対象がない/更新が怖い)になると、仕様変更を飲み続けて自分が消耗します。
だからこそ、仕様変更は「気合で乗り越える」ではなく、「合意ログ(証拠になる記録)で守る」のが現実解です。
この記事では、仕様変更・追加工数を無料化させないための、合意ログの作り方(テンプレ)を、メール文例と議事録ひな形でまとめます。
1. なぜ「合意ログ」が必要なのか:揉める論点はいつも同じ
仕様変更トラブルは、最終的に次の争点に収束します。
- そもそも「追加」だったのか(当初範囲内だったのか)
- 追加だとして、誰がいつ承認したのか(決裁者の合意)
- 工数と納期の調整があったのか(無料か有料か)
- 完成(検収)の基準は何だったのか
このうち、フリーランス側が弱くなりやすいのは「承認」「合意」「記録」です。
だから、合意ログは「戦うため」ではなく、「戦わないため(揉めないため)」に作ります。
2. 合意ログの基本ルール(これだけで事故率が下がる)
仕様変更で揉めないためにやることは、ほぼこの3点です。
- 変更は「内容・工数・納期・費用」までセットで確定
- 決裁者(GOを出す人)を押さえる
- 合意→着手の順に固定する(先に着手しない)
ポイントは、文章を長くすることではありません。
“後で読み返して誰が見ても分かる”粒度で、明確に・簡潔に残すことです。
3. 【コピペ可】仕様変更・追加工数の合意ログ(メールテンプレ3種)
テンプレ①:仕様変更を「追加」として切り出す(初動)
件名:仕様変更(追加要望)について確認(工数・納期・費用)
本文:
お疲れさまです。◯◯の件、追加要望として認識しています。
【追加要望の内容】
・(例)ログイン後の画面に◯◯機能を追加
・(例)APIレスポンスに◯◯項目を追加
【当初合意との差分】
・当初:◯◯まで
・追加:◯◯が増える
対応可否と、以下を確定したく存じます。
1) 追加工数見込み:(例)+◯人日(◯時間)
2) 影響範囲:(例)DB/API/フロント
3) 納期影響:(例)現行納期+◯営業日
4) 費用影響:(例)追加費用あり/単価調整/別見積
決裁者(最終OKの方)がどなたかも併せてご教示ください。
本メールへのご返信をもって、追加対応の合意(GO)とさせてください。
使いどころ:
「軽微だから」系の要望が来た時。ここで“差分”を文章化すると、無料化の歯止めになります。
テンプレ②:見積提示→承認依頼(合意を取りに行く)
件名:追加要望対応の見積(工数・納期・費用)承認のお願い
本文:
お疲れさまです。追加要望の件、見積をご連絡します。
【対応内容(確定案)】
・(箇条書きで3~5行)
【工数】
・合計:+◯時間(内訳:設計◯h/実装◯h/テスト◯h)
【納期】
・現行:YYYY/MM/DD
・変更後:YYYY/MM/DD(+◯営業日)
【費用】
・(例)追加:◯円(または、月額単価の調整/別途請求)
上記条件で進めてよろしければ、
「承認します(GO)」とご返信ください。
ご返信後に着手します。
使いどころ:
合意の“最終一押し”。「返信=合意」にするのが肝です。
テンプレ③:口頭合意を“文章に落とし込む”(議事録メール)
件名:本日の打合せメモ(仕様変更/追加要望の確認)
本文:
本日の打合せ内容をメモとして共有します。相違あれば本日中にご指摘ください。
【決定事項】
1) 追加要望:◯◯(当初範囲外)
2) 工数:+◯時間
3) 納期:YYYY/MM/DDへ変更
4) 費用:◯◯(追加請求/単価調整/別見積)
【未決事項(宿題)】
・◯◯の判断(担当:◯◯、期限:YYYY/MM/DD)
※相違がなければ、本メモの内容で確定として進めます。
使いどころ:
「言った/言わない」のいざこざを潰す万能文。短いけど確実です。
4. 【ひな形】仕様変更ログ(議事録/チケット)テンプレ
メールだけでなく、チケット管理や議事録にも流用できる形です。
【変更ID】CHG-YYYYMMDD-XX
【起案日】YYYY/MM/DD
【起案者】(誰が言い出したか)
【変更内容】
・何を、どう変えるか(箇条書き)
【背景/目的】
・なぜ必要か(1~2行)
【当初範囲との差分】
・当初:◯◯
・追加:◯◯
【影響範囲】
・機能:◯◯
・画面:◯◯
・DB/API:◯◯
・テスト:◯◯
【工数見積】
・合計:◯時間(内訳:設計/実装/テスト)
【納期影響】
・現行:YYYY/MM/DD
・変更後:YYYY/MM/DD(+◯営業日)
【費用影響】
・追加費用:有/無(内容:◯◯)
【承認】
・承認者:◯◯(役職/立場)
・承認日時:YYYY/MM/DD
・承認手段:メール/チャット/チケット
【備考】
・検収条件/優先度/リスクなど
これを“埋める”だけで、変更管理の粒度が整います。
5. よくある失敗パターン(これだけは避ける)
失敗1:着手してから合意を取りに行く
「先にやっておいて」は、後から最も揉めます。
合意がない時点で着手すると、交渉カードを自分で捨てることになります。
失敗2:決裁者が誰か分からないまま進める
現場担当がOKでも、支払いを決める人が別だと止まります。
合意ログには「承認者」を必ず入れる。
失敗3:差分が“感覚”のまま
「ちょっとだけ」「軽微」は事故の温床。
差分は箇条書きでいいので、文章化して残すのが鉄則。
6. まとめ:合意ログは“単一依存”から自分を守る道具
仕様変更や追加要望は、どんな現場でも起きます。
問題は、起きたときにフリーランス側が「飲むしかない」状態(単一依存)になっていることです。
合意ログは、相手を責めるためのものではなく、
合意を早い段階で可視化し、揉める芽を先手先手で潰すための道具です。
- 内容・工数・納期・費用をセットで確定
- 決裁者を押さえる
- 合意→着手の順で進める
- 口頭合意は議事録メールで固定する
この4点だけで、「無料でやらされる徒労感」は大きく減ります。