※本記事は一般的な情報提供を目的としています。法的助言ではありません。個別事情は専門家にご確認ください。
フリーランスエンジニアの案件選びで一番よくある失敗は、「単価が高い/技術が合いそう」だけで決めてしまい、あとから稼働・検収・支払い・商流で首が締まるパターンです。
そしてこういう事故は、能力不足というより、たいてい確認不足で起きます。
“脱おふたりさま”的に言い換えるなら、地雷はいつも同じです。
依存先が1つに固定される(単一依存)と、更新停止・単価ダウン・検収遅延が来た瞬間に足元が崩れます。
だから案件選びは、確認項目を標準化して事故案件を引く確率を下げるのが現実解です。
この記事は、そのための「コピペ可チェックリスト」を、応募前/面談時/契約前の3段階に分けてまとめます。
まず前提:チェックリストは“相手を疑う”ためではなく“自分を守る”ため
チェック項目を増やすと「細かい人と思われそう」と不安になるかもしれません。
ただ、ここで押さえたいのは、フリーランスの揉め事は悪意だけで起きるわけではない、ということです。
- 現場担当者は善意でも、決裁者は別
- 言ったつもり/伝えたつもりがズレる
- 小さい仕様変更が積み上がって“やって当然の作業”になる
- 検収が延びて入金が延びる(生活に直撃)
だから確認は、「攻撃」ではなく「守り」です。
「後で揉めそうな論点」を、前倒しで潰すためにやります。
【コピペ可】案件比較チェックリスト(応募前)
まず、案件票や初回の説明で判断できるものを挙げます。ここで❓が多い案件は、深入りしないのが得策です。
A. 単価・精算
- 単価は月額か時給換算か(表示の単位が明確)
- 精算幅(例:140–180)がある/ない
- 超過・控除の計算ルールが明記されている
- 交通費・機材費・その他控除の有無
- 待機が出た場合の扱い(減額/別案件提案/不明)
B. 稼働・働き方
- 週の稼働日数/時間が明記
- リモート可否(「可」ではなく実態:週何回出社か)
- 勤務時間帯の拘束(固定か、裁量か)
- 開始時期・更新サイクル(1か月更新等)
- 休日・夜間対応の可能性(障害対応の当番など)
C. 商流・相手の見え方
- 契約相手(あなたが契約する会社)が明確
- 商流の段数(一次/二次/三次…)が説明される
- 最終的な評価者(誰がOKを出すか)が見える
- 現場の意思決定者が近い(伝言ゲームにならない)
D. 支払い
- 支払いサイト(例:月末締め翌月末払い)が明記
- 検収の前後で支払いが変わるか(検収後払い等)
- 請求書の締め日と入金日が整理されている
応募前の結論はこれです。
「不明」が多い案件ほど、後であなたがコストを払う可能性が高い。
💡【ちょっと解説】精算幅(例:140–180)って何?
フリーランスで仕事をしたことのあるかたであれば既にご存じとは思いますが、フリーランス案件で出てくる「精算幅(例:140–180)」とは、ざっくり言うと月額単価を“何時間分の稼働”として精算するかというルールです。
たとえば、月額単価が80万円で精算幅が140–180の場合、
- 月の稼働が 140〜180時間 に収まる
→ 80万円は満額(固定) - 140時間未満(稼働が少ない)
→ 「控除(減額)」が発生しやすい - 180時間超(稼働が多い)
→ 「超過(追加支払い)」が発生しやすい
つまり「単価80万円」の中身は、実は「140〜180時間の範囲を想定した80万円」ということです。
単価だけ見ていると、ここで実効単価がズレます。
👉具体イメージ(ざっくり計算)
(例)月額80万円/精算幅140–180
→ 1時間あたり単価は、契約上の基準時間(160時間など)で割って計算されることが多いです。
基準時間を160時間とすると「80万÷160時間=5000円(1時間あたり単価)」
- もし 130時間しか稼働できなかった(140未満)
→ 不足分×時間単価分 を減額(5000円×10時間=5万円→支払いは75万円) - もし 190時間働いた(180超)
→ 超過分×時間単価分 を追加(5000円×10時間=5万円→支払いは85万円)
※基準時間、端数処理、控除と超過の単価が同じか等は契約で変わります。
👉ここが地雷:精算幅は「片側だけ不利」なことがある
案件によっては、次のような“片側だけ厳しい”設計があります。
- 控除は厳しいのに、超過は弱い/出ない(みなし残業的)
- 精算幅が狭く、少しのブレで控除が発生しやすい
- 実態として長時間になりがちなのに、超過条件が曖昧
単価が高く見えても、精算ルールが悪いと、手取りと負荷が釣り合わなくなります。
👉面談でこのまま聞ける確認項目(コピペ可)
- 精算幅は何時間〜何時間ですか?(例:140–180)
- 基準時間は何時間で計算しますか?(160?170?)
- 控除単価と超過単価は同じですか?
- 端数処理(15分単位/30分単位/切り上げ切り捨て)は?
- 「超過が出ない(みなし)」条件はありますか?
【コピペ可】面談・打合せで聞く質問テンプレ(そのまま聞けます)
次に、面談や打合せで「曖昧さを潰す」フェーズです。ポイントは、感情ではなく事実確認。
1)検収・成果の扱い
- 「検収は何をもって完了ですか?期限はありますか?」
- 「検収が長引いた場合、支払いはどうなりますか?」
- 「成果物の責任範囲(瑕疵対応)はどこまでですか?」
2)仕様変更・追加要望
- 「仕様変更が出た場合、工数見積→合意→着手の流れになりますか?」
- 「追加要望の判断者(誰がGOを出すか)はどなたですか?」
- 「追加分の費用・納期調整は、どのタイミングで確定しますか?」
3)稼働と裁量
- 「稼働は“成果ベース”ですか、“指示ベース”ですか?」
- 「作業手順や優先度は、どこまでこちらで裁量を持てますか?」
- 「朝会・定例・出社など、固定拘束はどの程度ありますか?」
4)契約と支払いの実務
- 「契約相手は御社で合っていますか?商流は何次ですか?」
- 「支払いサイトと請求締めの実務を、具体的な日付で教えてください」
- 「途中で終了する場合、告知期間や精算はどうなりますか?」
面談での赤信号は、答えが雑というより「答えが出ない」ことです。
決裁者が遠い・商流が深い・運用が曖昧。
この3つが揃うと、事故発生率が上がります。
【コピペ可】契約前チェック(最後の砦)
契約前は“確認の最後の砦”です。ここでズレを放置すると、揉めたときに争点が増えます。
契約類型(準委任/請負)と責任
- 契約が準委任か請負か、説明と実態が一致している
- 成果物の定義(何を納めるか)が明確
- 瑕疵対応(無償修正の範囲・期間)が明確
- 途中解約の条項(通知期間・精算)が明確
検収・支払い
- 検収の期限(何日以内に返答か)が明記
- 支払い条件(検収後払い等)が整理されている
- 請求書の提出タイミングが確定している
変更管理(揉める原因No.1)
- 仕様変更の手続(合意・追加見積・納期変更)が条文化されている
- 変更ログ(メール/チケット等)を残す運用が合意されている
- 追加要望を“無料で受ける”前提になっていない
契約前の結論:
「契約内容の不明瞭さが、揉めたときに事態をややこしくする」。
これは現実として、非常に大きいです。
“脱おふたりさま”視点の裏チェック:単一依存を避ける5つの確認
最後に、生活を守る上で効く「裏チェック」を置きます。
- その案件が切れたとき、次の候補はあるか(常に比較対象を持つ)
- 支払いが1〜2か月遅れても耐えられるか(バッファ月数)
- 評価者が近いか(伝言ゲームは事故の温床)
- 契約相手を特定できるか(回収不能の芽は摘んでおく)
- 仕様変更を無料化しない運用ができるか(合意→着手)
ここまでやると、「案件ガチャ」の確率は目に見えて下がります。
まとめ:チェックリストは事故率を下げる道具
案件選びで疲れるのは、毎回ゼロから考えるからです。
チェックリスト化して、判断を標準化すると、感情や焦りで突っ込みにくくなります。
- 単価:実効単価で見る
- 稼働:時間より裁量と責任線
- 商流:契約相手の特定と評価者の距離
- 支払い:サイトと検収条件
- そして単一依存を避け、依存リスクを分散する
この型で比較すれば、“あー、失敗した!”が起きる可能性は大きく変わります。