母子・父子世帯の教育費は「奨学金×自治体支援×転職・副業」の掛け算で考える――制度に振り回されず、こちらから取りに行くための実務ガイド

母子・父子世帯の教育費は「奨学金×自治体支援×転職・副業」の掛け算で考える――制度に振り回されず、こちらから取りに行くための実務ガイド

まず、「奨学金」は“種類”と“落とし穴”を知ったうえで使う

高校段階で使える公的支援は複数制度あり。取りこぼしを見逃すな

高校段階は、公的支援を一番取りこぼしやすいタイミングです。
代表的な制度は、ざっくり以下の三つです。

1 高等学校等就学支援金制度(国)
高校の「授業料」に充てるお金を国が負担してくれる制度です。 年収約910万円未満の世帯(モデル世帯基準)なら対象になり得ます。文部科学省

2 高校生等奨学給付金(都道府県)
授業料以外の教育費(教科書費・学用品費・修学旅行費など)を支援する給付金。 生活保護世帯や住民税非課税世帯等が対象で、ひとり親世帯も主な対象に含まれます。文部科学省

3 自治体独自の奨学金・給付金
例として東京都足立区では、児童扶養手当受給世帯の子ども向けに、大学受験料・模試代の助成など、かなり細かい制度が用意されています。足立区ホームページ

ポイントは、

「授業料そのもの」と「それ以外の教育費」は別の制度でカバーされる

ということです。

  • 就学支援金 → 授業料
  • 奨学給付金 → 教材費など
  • 自治体独自 → 受験料・模試代など

というイメージで、全部セットで取りに行く前提で動いたほうが得です。

大学・専門学校の奨学金は「給付」と「貸与」が別物

次に、大学・短大・専門学校などの高等教育段階。

ここで押さえておきたいのは、ざっくり次の構造です。

  1. 高等教育の修学支援新制度(給付型+授業料減免)
    2020年度から始まった制度で、
    • 授業料・入学金の免除/減額大学ごとの実施
    • 返済不要の給付型奨学金
      の2本立てで、大学・短大・専門学校の学費負担を軽くする仕組みです。文部科学省「学びたい気持ちを応援します」
    • JASSO(日本学生支援機構)の給付型奨学金
      上記制度の「給付奨学金」部分を担当しているのがJASSOです。
      世帯収入・資産の基準を満たし、「学ぶ意欲」があれば成績だけでは落とされにくい設計になっています。JASSO
  2. JASSOの貸与型奨学金(第一種・第二種)
    • 第一種:無利子
    • 第二種:有利子
      という2種類の「借りる奨学金」。入学時特別増額などのオプションもあります。JASSO

このうち、「返さなくていい」のは

  • 高等教育の修学支援新制度の給付部分
  • 学校独自・自治体独自の給付型奨学金

であり、貸与型はあくまで借金です。

母子世帯の場合、所得基準的に

  • 修学支援新制度+JASSO給付
  • それでも足りない分を、無利子の第一種や学校独自の貸与で補う

という組み合わせを狙いやすいゾーンにいることが多いです。

奨学金の「よくある誤解」と「本当に怖いポイント」

シングルマザー層でよくある誤解は、このあたりです。

  • 「みんな借りてるから大丈夫」
  • 「大学卒業したらなんとかなるでしょ」

現実には、

  • 卒業後の収入次第では、返済が家計を圧迫する
  • 延滞すると、遅延金・信用情報への登録(いわゆるブラック)が発生する
  • 保証人を付けた場合、親族に請求が飛ぶリスクがある
  • 機関保証にした場合、保証料で実質的な負担が増える

といった重荷を背負うことになるケースが多発しています。

母子世帯の文脈でいうと、

  • 親自身も収入が不安定
  • 子どもの就職も給料は低額からスタートが普通

という前提を踏まえ、

「貸与型はいくらまでなら現実的に返せるか」を親子でシミュレーションしてから申し込む

ことが重要です。

自治体ごとの支援制度を取りこぼさない「探し方」

「奨学金」はまだわかりやすいほうで、本当に見えづらいのは自治体ごとの支援です。

東京都のひとり親向けサイトを見るだけでも、児童扶養手当、児童育成手当、家賃助成、医療費助成、学習支援など、かなりのメニューがあります。シングルママ・シングルパパ くらし応援ナビ

ただし、名称や窓口が自治体ごとにバラバラで、「知っている人だけが得をする」設計になりがちです。

キーワードは「ひとり親」「子育て支援」「就学援助」

まずは、自分の自治体のサイトで、次の語を片っ端から検索します。

  • 「ひとり親」
  • 「母子家庭」「父子家庭」
  • 「子育て支援」
  • 「就学援助」「奨学金」
  • 「高校生等奨学給付金」「就学支援金」

さらに、サイト内の部署名でいうと

  • こども家庭課・子ども家庭支援課
  • 福祉事務所(生活保護を扱うところ)
  • 教育委員会・学務課

あたりが、教育費・生活費関連の支援を握っていることが多いです。

サイトで迷子になったら、さっさと電話してしまう

正直に言って、自治体サイトは見づらいです。リンクが分散していて、同じ給付でもページが複数にまたがっていたりします。

なので、ある程度調べてわからなかったら、躊躇なく電話が正解です。

電話するときのコツは、

  • 母子家庭で高校生の子どもがいる」など、属性を先に伝える
  • 教育費と生活費について、使える制度を全部教えてほしい」とまとめて聞く
  • 窓口が違うものは、そちらの連絡先も教えてください」とお願いする

です。

問い合わせ先の代表例として、東京都の「ひとり親家庭支援ナビ」では、児童扶養手当や児童育成手当の詳細と問い合わせ窓口をまとめて載せています。シングルママ・シングルパパ 暮らし応援ナビ

こういう“まとめページ”が自分の自治体にもないか、一度探してみる価値があります。

学校と「第三者窓口」も味方につける

自治体だけでなく、学校側にも窓口があります。

  • 高校・大学の奨学金担当窓口
  • スクールソーシャルワーカー
  • 担任や学年主任

に対して、

「母子家庭で家計が厳しい。使える支援制度があれば教えてほしい」

と、はっきり伝えることも重要です。

また、各地の「ひとり親家庭支援センター」「社会福祉協議会」も、奨学金・生活資金の貸付・就労相談に強い窓口です。こども家庭庁

「役所は冷たい」と決めつけるより、考えられる制度や関係各所をハシゴしまくって情報を集めるほうが、結果的に早道になります。

手続きは面倒かもしれません。でもここで手間暇をかけたことが「シングルでも子どもの将来を断ち切らない」ことに繋がります。支援のための制度は対象者が利用するためにあるのであって、公的機関の「制度作ったぞー」という自己満足のためにあるのではありません。情報収集をして制度を使い倒すことに、なんの躊躇もなんの遠慮もなんの恥ずかしさも要りません。

教育費×転職×副業の「現実的な組み合わせ方」

制度をフル活用しても、それだけで教育費がすべて賄えるとは限りません。
そこで効いてくるのが、「親側の収入アップ」です。

ただし、やみくもに「転職しよう」「副業しよう」だと危険なので、教育費との組み合わせで考えます。

転職は「年収アップ+働きやすさ」で教育費の土台を作る

転職の目的を、

「とにかく年収を上げる」
ではなく
「まずは教育費を確保できるだけの年収と安定性を確保する」

と定義し直します。

具体的には、

  • 目標年収ラインを決める(例:年収300→350→400万と段階的に上げる)
  • 子どもが中学・高校に入るまでに、どこまで上げたいか逆算する
  • 残業時間・休日出勤・シフトの柔軟性もセットで見る

ことが大事です。

ひとり親向けの就労支援として、「高等職業訓練促進給付金」など、資格取得期間中の生活を支える制度もあります。消費者庁

  • 看護師
  • 介護福祉士
  • 保育士
  • デジタル系の資格

など、「取れば一気に時給・年収が上がる」職種もターゲットに入り得ます。

「今すぐ転職」か「数年かけて資格&職種転換」かは、年齢と子どもの年齢との兼ね合いですが、どちらにしても「教育費を見据えたキャリアアップ」という発想が軸になります。

副業は「教育費専用の財布」として“小さく始める”

副業は、やり方次第で強い味方になりますが、シングルマザーの場合、時間と体力の制約が大きいので、やりすぎは危険です。

ポイントは、

  • 副業収入=教育費専用と割り切る
  • 月○万円まで、週○時間まで、と上限を決める
  • 本業に支障が出たら「いったん撤退」の方向もあり

などです。

例えば、

  • 平日夜や週末に、在宅の事務・ライティング・データ入力などを月2〜3万円分
  • その収入は、すべて「教育費口座」に振り分ける

というような設計にすると、「やる意味」が明確になります。

税金・社会保険・会社バレの基本注意点

副業を絡めるときに、必ず押さえておきたいのが税金まわり。本業の会社に副業を知られたくない事情があるなら要注意です。

一般的には、

  • 給与以外の副業所得(売上−経費)が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要
  • 20万円以下でも、住民税の申告は必要なケースがある

といったルールがあります。やよい株式会社

また、

  • 会社が住民税の特別徴収(給与から住民税を天引き)をしている場合、副業収入が増えると住民税額が上がり、「あれ?」と気づかれることがある
  • 自分で「普通徴収」を選べるケースもあるが、自治体や状況によって扱いが違う

といった「会社バレ」リスクも指摘されています。マネーフォワードクラウド

細かな税務判断は税理士や税務署に確認してもらう前提として、ひとまず次の3点だけは意識しておくと安全です。

  1. 「売上」ではなく「利益(売上−経費)」で20万円を見る
  2. 所得税の確定申告が不要でも、住民税の扱いは別物と理解しておく
  3. 副業を本格化させる前に、一度「税務相談」を受けておく

教育費のために始めた副業で、税金まわりがグチャグチャになると本末転倒なので、ここだけは少し慎重すぎるくらいでちょうどいいです。

「制度+収入アップ+周囲の支援」の3本柱で考える

ここまでをまとめると、母子世帯の教育費は

  1. 制度をフル活用する
    • 高校:就学支援金+奨学給付金+自治体独自の支援
    • 大学等:修学支援新制度+JASSO給付+学校・自治体の奨学金
  2. 親の収入アップで“土台”を厚くする
    • 転職・資格取得で年収ラインを押し上げる
    • 副業は教育費専用の財布として、小さく・短期で使う
  3. 元配偶者・祖父母など周囲の支援も「制度」として位置づける
    • 養育費は公正証書・調停調書で取り決める
    • 祖父母からの支援は、「教育費目的」として具体的にお願いする

この3本柱の組み合わせで考えるのが現実的です。

「脱・おふたりさま」の視点から言えば、

「慰謝料・養育費・親族等の支援」という期待は、あくまで“オマケ”として扱う

ことが、メンタル的にも安全です。

  • まず自分の収入と制度で、最低限のラインを確保する
  • そのうえで、もらえる支援は遠慮なく取りに行く

という順番にしておけば、誰かの気まぐれに振り回されにくくなります。

おわりに:「情報を取りに行く力」が、教育費奪取には一番の味方

ここまで読んで、

  • 制度が複雑すぎて、かえって疲れた
  • こんなに調べきれない

と感じたかもしれません。

正直、それが普通の反応です。制度設計の側に問題がある部分も大きい。

ただ、それでも現実的に言えば、

「情報を取りに行く力」が、母子世帯の教育費の一番の味方

であることは間違いありません。

  • 自治体サイトやパンフレットを読む
  • わからなければ電話して聞く
  • 学校・支援センター・SNSコミュニティで経験者の知恵を借りる

このあたりを面倒くさがらずに一歩踏み出せるかどうかで、使える制度の数が変わり、そのまま子どもの選択肢の数に直結します。

このブログ「脱・おふたりさま」では、

「この制度の解説を詳しく知りたい」
「こういう状況だけど、どう組み立てたらよさそうか」

といったピンポイントな相談があれば、そこからまた深掘りして記事にしていきたいと考えています。

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