You Tube「スカッとストーリー」への違和感
数百万円の慰謝料は、そんなに簡単には払われない
YouTubeやSNSを見ていると、
「不倫した夫から慰謝料◯百万円を勝ち取ってやった」
「不倫相手からしっかり数百万円、払わせました」
そんな“スカッとする話”が、結構流れてきます。
ただ、裁判所で長く勤務し、離婚事件やその後の強制執行を見てきた立場から正直に言うと、そうした話には「現実とのズレ」がかなりあると感じています。
この違和感こそが、「脱・おふたりさま」というブログを始めた出発点でした。
「判決」があっても、「お金が入らない」現実。なければなおさら
裁判所の中では、
- 不倫した配偶者に○○万円の慰謝料支払い
- 長期間の分割払い(例:月3万円を数年単位で)
といった内容の判決や和解は、珍しくありません。
紙の上だけ見れば、「ちゃんと戦って勝ち取った」という形になります。
ですが、そこからが本当の現実です。
実務で見てきたのは、
- 最初の数か月だけは真面目に払う
- やがて遅れがちになり、いつの間にか途絶える
- 転職・退職・夜逃げで連絡が取れなくなる
- 強制執行をしても、差し押さえる財産がない
といったケースの、なんと多いことか。
和解調書や判決文の中では「勝った」ように見えても、銀行口座に実際のお金が振り込まれなければ、生活は1ミリも好転しません。
公的な制度で権利を取ってもこの状況なのですから、単なる口約束では尚更です。
長期分割払いという”見えにくいリスク”
途中で止まる支払い、空振りする強制執行
特に危ういのが、「何年もの長期にわたる分割払い」です。
- 子どもが成人するまで、毎月○万円
- 5年、10年かけて慰謝料を返す
文章で読むと「総額では結構取れた」と感じるかもしれません。
しかし、現場感覚で言えば、そうした長期払いが最後まで完走する例は多くありません。
「あてにしていたお金」が止まった時に起きること
支払いが止まるたびに、
- 催促の連絡をし
- 内容証明を送り
- 場合によっては給与差押えや預金差押えを検討し…
という消耗戦が始まります。
その強制執行も、財産が見つからなければ空振りに終わります。
こうした現場を何度も見てきた結果、私が言いたいことは
「慰謝料や養育費を“あてにして”人生設計を立てるのは、あまりにも危険だ」
ということです。
女が働くのが当たり前の時代に理不尽に耐える必要はない
相手の収入に縛られた人生から抜け出す発想
昔は、「夫が外で稼ぎ、妻は家を守る」のが当たり前という時代がありました。
その名残で、今でも
- 経済的に不安だから、離れたいのに離れられない
- 生活費を握られているから、理不尽な扱いに耐えてしまう
という状況にいる人は少なくありません。
我が家庭の記憶
私の母親は、まさに「理不尽に耐え続けた人」でした。
アラフィフの私が子どもだった頃は、今のように女性が働ける場所も、選べる仕事も多くありませんでした。専門的な資格やスキルでも持っていない限り、選択肢はほんのわずか。結婚したら、家事と育児をこなして、夫の稼ぎで暮らしていく――そんな生き方がまだまだ「普通」だったと思います。
私の父は職人で、絵にかいたような「職人の家庭」でした。腕は悪くなかったのかもしれませんが、典型的な職人気質で「仕事はあればやる。なければ無理して探してまではやらない」。給料が入ってもそれを家計に入れようとはしませんでした。
母が生活費をお願いすると、返ってくるのはお金ではなく怒鳴り声。父の怒号が飛び、母が小さくなって黙り込む。その光景を、私は今でもはっきり覚えています。「こんな父親ならいないほうがいい」と子ども心に何度も思ったものです。
母は、それでも家事も育児もすべて一人でこなし、さらに町工場へパートに出て、家庭を支えてくれました。私には、母が家で座っている姿の記憶がほとんどありません。立ち働いている姿ばかりが記憶に残っています。
そんな中、父がほぼ働かず母のパート代だけではどうにもならない時期があり、とうとう生活保護を受けることになりました。民生委員とやら言う人間がやってきて、贅沢品はないかとジロジロ家の中を見回していった時のことを私は忘れません。
そういった生活状況でしたが、子どもの私にとって一番つらかったのは、「貧乏そのもの」ではありませんでした。
一番つらかったのは、「理不尽に耐え続ける」母の姿を、毎日目の前で見ていたことです。
朝から晩まで働き通しなのに、文句ひとつ言わない。怒鳴られても、悔しさを飲み込み、ただ黙って耐える。その背中を見ながら、「どうしてお母さんだけこんなに我慢しなきゃいけないんだろう」と、子ども心に何度も問い続けていました。
もし、母が一人だったなら、あの頃でも、離婚して自分一人の食い扶持くらいは何とかできたのかもしれません。あるいは、働く場所が今のようにたくさんあったなら、父とは別れて子どもと自分だけでなんとかやっていくという選択も可能だったのかもしれません。けれど、収入ということを考えたら、簡単には家を飛び出せない。自分ひとりの問題では済まないから、たまにしか渡されない父からのお金でも頼るしかなかったのだと思うと、今でも胸が張り裂けそうになります。
あの時、母が飲み込んだ悔しさや涙は、きっと私が想像している何倍も重かったはずです。理不尽に耐えるしかなかった母の人生を思うたびに、どれだけ多くのものを諦めさせられてきたのかを痛いほど感じるのです。
そして、多くのものを諦めたのは母だけでなく、その子どもである私も同様でした。
あなたが理不尽に耐えることで、子どもにも同じ理不尽を強いてしまうおそれもあるのです。
「自力で生活する」を軸に選択肢を増やす
でも、今はもう多様な働き方を選択することができ、「女が働くのは普通」の時代です。
そして、フルタイムに限らず、パートでも、在宅ワークでも、副業でも、収入の形はいろいろあります。
だからこそ、私は声を大にして言いたいのです。
⛓️「パートナーの理不尽に耐える」のではなく、
⛓️💥「いつでも理不尽から離れられるようにする」ことに目を向けよう、と。
誤解なきようお伝えしておきますが
決して離婚を推奨したり、一人で生きることがベストだと言いたいのではありません。
ただ「耐えがたい理不尽に耐えてまで、自分の人生を不自由にする必要はないだろう」ということを言いたいだけです。
相手の収入ありきで人生の選択を縛られるのではなく、「自分ひとりでも最低限は暮らしていける」という軸を持つことで、初めて、「離婚するか・しないか」も“自分の意思”で選べるようになります。
母子世帯も父子世帯も、男性シングルも応援したい
「女性寄り」の記事が多くなりがちな理由と、あらかじめの断り書き
このブログでは、母子世帯の話題を取り上げることが多くなります。
理由のひとつは、統計的に見ても、シングルで子どもを育てる女性の方が、収入面で厳しい状況に置かれがちだからです。
そのため、どうしても「女性側に寄った」記事が多くなると思います。
ここはあらかじめ、
「男女の収入格差という現実を踏まえた結果、女性寄りの記事が増えがちになるけれど、そこは少し大目に見てください」
とお伝えしておきたいところです。
父子世帯も男性シングルも生きづらい
ただし、だからといって「男性シングルは放っておく」のかと言えば、まったく逆です。
- 父子世帯で、仕事と子育てを一人で背負っているお父さん
- 離婚や別れを経て、ひとり暮らしになった男性
- 結婚経験はなくても、家族を持たない生き方を選んでいる男性
こうした男性シングルの生きづらさや不安も、別の形で確かに存在します。
このブログは、母子世帯だけでなく父子世帯も、そして男性のシングルも含めて、
「パートナーがいなくても自力で立っていく人たち」を応援したいと考えています。
「脱・おふたりさま」に込めたメッセージ
「脱・おふたりさま」というタイトルには、
- パートナーがいるか・いないか
という話を超えて、 - パートナー次第の人生から、自分の足で立つ人生へ
- 相手の機嫌や収入に振り回されない選択肢を持つ
という意味を込めています。
このブログでは、
- 当ブログで扱うテーマ例
- ✅週3日のパート+αで生活基盤を作る工夫
✅転職・副業・フリーランスなど、稼ぎ方の選択肢
✅離婚や別れを選ぶ前に、ひそかに準備しておくこと
✅裁判・慰謝料・養育費・強制執行の「きれいごと抜きの現実」
こうしたテーマを、裁判所実務の現場を見てきた視点から、できるだけリアルに書いていきます。
慰謝料や養育費が一円も入ってこなくても、
「それでも私は自分の人生を自分で選ぶ」と言える人が、一人でも増えてほしい。
そのための小さな材料を、このブログで少しずつ届けていけたらと思っています。
これが、「脱・おふたりさま」というブログのコンセプトです。
ここから一緒に、「自力で生活できる」を軸にした生き方を考えていきましょう。