※本記事は一般的な情報提供を目的としています。法的助言ではありません。個別事情は専門家にご確認ください。
案件比較で一番危ないのは「単価だけで決める」こと
フリーランスエンジニアの案件選びでは、どうしても最初に単価に目が行きがちです。
ただ、現実に“詰む”パターンは、単価が低いからではなく、単価以外の条件の部分でキャッシュフローと交渉力が消耗されることで起きます。
ここで、この記事の結論を先に言います。
フリーランスにとって本当の地雷は、依存先が「1つに固定」されること(単一依存)です。
- 売上のほぼ全てが1案件
- 契約相手が実質1社(商流が深くても“契約相手”は1社)
- 評価・意思決定が1人/1部署に集中
- 支払いの裁量を握る相手が1つで、代替がない
単一依存になると、更新停止・単価ダウン・検収遅延・仕様追加が来た瞬間に、交渉カードがなくなります。
“脱おふたりさま”の文脈で言えば、こういった事態を想定して、単一依存を避け、依存リスクを分散するのが現実解です。
そのために、案件比較は次の4軸で見ます。
単価/稼働/商流/支払いサイト。そして最後に「契約と運用の癖(揉めやすさ)」まで確認します。
比較軸① 単価:見るべきは“表示単価”ではなく実効単価
表示単価(月80万など)は入口です。差が出るのは、「表示されにくい条件がどうなっているのか」です。
- 精算幅(例:140–180)と控除ルール
- 待機が出た場合の扱い(減額・無給・別条件)
- 検収や成果物責任がどこまで重いか(請負寄りか)
ここで重要な「見逃しやすいポイント」を1つ。
単価が高い案件ほど、責任が“請負っぽく”重くなることがあります。
請負は「完成」が前提になりやすく、完成していないと報酬請求が通りにくくなる局面がありますが、プログラム開発のトラブルでは、まさにこの「請負か準委任か」が争点になる類型が繰り返し見られますので注意が必要です。
単価比較の結論はシンプルです。「高い=勝ち」ではありません。
高単価の裏にある責任(検収・追加要望・瑕疵対応)まで含めた“実効単価”で比較します。
比較軸② 稼働:稼働時間は“拘束”と“裁量”を分けて見る
稼働(週5常駐、週3リモート等)は生活設計に直結します。
ただし、危ないのは「時間」より自分に裁量があるか/指揮命令が濃いかです。
- 何時から何時まで、現場の指示通りに動く
- タスクの優先順位も手順も細かく指示される
- 実質、社員と同じ運用だが契約は業務委託
このタイプは、トラブルになったときに「契約上の建付け」と「実態」がズレて争点が増えます。
ここで読者が得する判断基準は、稼働日数よりも次の確認です。
- 仕様変更や追加要望の意思決定者は誰か
- あなたが「No」と言える範囲(裁量)はどこか
- スケジュール遅延の責任がどこに寄る設計か
稼働比較の結論:
時間の長短だけでなく、裁量の幅と責任の線引きを見ないと、同じ週5でも“不自由さ”が強くなってしまいます。
比較軸③ 商流:深さは“手取り”だけでなく回収リスクも増やす
商流が深いと手取りが減る。ここまでは誰でも言います。
でも、本丸はここです。
「契約相手は誰か?」が曖昧な案件は黄色信号
揉めたときに戦う相手は、発注元ではなく契約上の相手方です。
商流が深いほど、あなたの契約相手が小規模だったり、資金繰りが弱かったりする確率が上がります。つまり、回収不能リスクが上がるのです。
「支払いは元請けが…」「実質は大手の案件で…」
この説明が曖昧なまま進む案件は、単価が良くても一度立ち止まって再考してみましょう。
評価者が遠いほど揉めやすい
もう1つ。成果物の評価者が遠い(伝言ゲームになりがち)ほど、後でこうなります。
- 「聞いてない」「想定と違う」
- 追加要望が雪だるま式に増える
- 検収が長引く(=入金が遅れる)
商流比較の結論:
手取りだけでなく、“契約相手の特定”と“評価者の距離”で、揉めやすさを見抜きます。
比較軸④ 支払いサイト:あなたが“資金繰り”を肩代わりしていないか
支払いサイトが60日、90日という案件は珍しくありません。
これは極端に言えば、あなたが案件元に運転資金を貸している状態です。
生活防衛資金が薄い人ほど、支払いサイトの長さで詰みます。
ここで大事なのは、精神論ではなく数字です。
- 支払いが90日なら、最初の入金まで3か月
- 検収が伸びれば、さらに後ろ倒し
- その間の家賃・生活費・税社保の支払いは待ってくれない
支払いサイト比較の結論:
単価が高いほど支払いが遅くても耐えられる、は勘違いです。「あなたのキャッシュ(バッファ)がたえられるのかどうか」「生活がまわるのかどうか」、です。
【言われてみればそうかも】“気づきポイント”5つ
最後に、「そうか、それ大事だよね」となりやすい比較視点を5つ置きます。
- 契約相手の与信(回収できる相手か)
単価より重要なことがある。無い袖は振れません。取れない相手からは取れません。 - 検収の定義と期限
検収が曖昧=入金時期が曖昧。ここがキャッシュ事故の温床です。 - 仕様変更の手続(合意→着手の順序)
“軽微だから”の積み上げは、無料労働の温床になります。 - 意思決定者の位置(評価者が誰か)
決裁者が遠いほど、合意が手間になります。 - 単一依存にならない設計(比較対象を常に持つ)
案件選びの失敗の多くは、焦りから起きます。焦りを減らすカギは「選択肢の有無」です。
裁判例が示す「揉める案件」の典型パターン(教訓として)
裁判例・紛争事例で繰り返し出てくるのは、概ね次の類型です。
- 請負/準委任の評価が争点になり、報酬請求の見通しが変わる
- 追加要望・仕様変更の「合意と記録化」が軽視され、追加報酬で揉める
- 検収や完成の基準が曖昧で、支払いが止まる/遅れる
ここからの教訓は、「戦い方をどうするか」ではありません。
戦う前に、争点が出ない設計にしておくことです。つまり、案件比較の段階で“揉める芽”を見つけて摘み取っておくのが肝心。
まとめ:案件比較の結論は「単一依存を避け、依存リスクを分散する」
本記事の要点を一行で言うなら、これです。
フリーランスの地雷は単価ではなく、単一依存。
案件比較は、この順番で十分に強くなります。
- 実効単価(精算幅・待機・検収責任まで)
- 稼働(時間より裁量と責任の線)
- 商流(契約相手の特定=回収リスク、評価者の距離)
- 支払いサイト(あなたが資金繰りを肩代わりしていないか)
そして最後に、単一依存を避けるために、常に「比較対象」を持つ。
十分に吟味したつもりでも、契約上の事故が絶対に起きないとは言い切れません。
依存が1点に集中しないように、依存リスクを分散することが、万が一の際にあなたの生活を守ることになります。