フランチャイズ(FC)でハウスクリーニングを始めると、多くの場合「最初のお客さん」は本部が連れてきてくれます。ここは強い。立ち上げ期に迷走する確率がグンと下がる。
でも、将来的に「完全独立(=本部の紹介に依存しない状態)」まで見据えるなら、避けて通れないものがあります。「営業力」です。
ここで言う営業力は、スーツで訪問して名刺を配る力ではありません。
もっと生活者向けの、地味で、泥臭くて、でも相手の気持ちを動かす力です。結論から言うと、ハウスクリーニングで必要な営業力は次の4つに集約されます。
- 信頼を短時間で作る力(知らない人を家に入れてもらう仕事だから)
- 単価を守る力(値下げしない、値上げを言える)
- リピートと紹介を生む力(1回限りで終わらせない)
- 見込み客に見つけてもらう力(地域での露出・検索・口コミ設計)
この4つを、他業態の「営業力」の例と対比しながら、ハウスクリーニング用に分解していきます。
営業力は「売り込み力」ではなく「受注が自然に発生する仕組み力」
営業と聞くと、押しが強い、話がうまい、断られても折れない――みたいなイメージが出がちです。
でも生活者向けサービス(清掃、修理、訪問サービス)では、むしろ逆です。
- うまい話術より、安心感
- 強いクロージングより、説明の明瞭さ
- 根性の電話営業より、口コミと紹介
- とにかく件数より、単価と再来
つまり営業力とは、「お客が不安なく頼めて、価格に納得し、次も頼みたくなる状態を作る能力」です。
ここを外すと、頑張っているのに成果に繋がらない、“自転車操業が続く”状態になりかねません。
まずは比較:業態ごとの「営業力」は何が違う?
同じ“営業”でも、業態が変わると求められる能力がガラッと変わります。いくつか具体例を出します。
1)法人向けSaaS(ITサービス)の営業力
- 課題を聞き出す力(ヒアリング設計)
- 導入効果を数字で説明する力(ROI・費用対効果)
- 社内稟議を通す資料化力(提案書・決裁者向け説明)
- 長期追客(意思決定が遅い)
ここは「論理」と「社内政治」が主戦場です。話がうまいより、資料と設計で勝負です。
2)不動産の営業力
- “買う理由/買わない理由”を言語化する力
- 物件のメリット・デメリットを正直に伝える力(信頼)
- 住宅ローンや契約手続きの段取り力
- クレーム予防(期待値調整)
ここは商品価格の高さゆえ「意思決定の重さ」が段違いなので、信頼と段取りが最大武器です。
3)保険の営業力
- 不安を煽らず、必要保障を設計する力
- 比較と落とし穴(免責、給付条件)を説明できる力
- 継続フォロー(ライフイベントで見直し)
ここは「顧客の理解」を作るのが営業力の中心です。売るより“納得させる”が強い。
4)飲食店の営業力
- 立地×看板×導線(通行客を入店させる)
- リピート動線(味、接客、回転、SNS)
- 口コミ管理(評価への返信、改善)
ここは「広告より体験」。「一度来た人をいかに再来させるか」が腕の見せ所です。
5)訪問修理・生活サービス(鍵、水道、家電、清掃)の営業力
- 怖くない・怪しくないと思わせる力
- 見積もりの透明性(料金表、追加費用の説明)
- 作業の安心感(養生、清潔感、説明)
- 仕上がりと再発防止の提案(次の依頼へ)
ハウスクリーニングは、この5)にど真ん中で入ります。
つまり、求められるのは「押し」ではなく安心・透明性・再来設計です。
ハウスクリーニングで求められる営業力(本体はこの5つ)
ここからが本題です。ハウスクリーニングの営業力は、次の5能力に分解できます。
1)“家に入れていい人”と思わせる信頼形成力
ハウスクリーニングは、商品が目に見えない上に「自宅」というプライベート領域に入ります。
つまり、最初の壁は技術ではなく不安の解消です。
具体的には、
- 返信が速い/文章が丁寧/敬語が破綻していない
- 身だしなみ、清潔感、道具の整理
- 事前に「作業範囲」「所要時間」「注意点」を説明する
- 到着時の挨拶、名乗り、手順説明
これ、営業というより“当たり前”に見えますが、生活者サービスでは当たり前の差が売上差になります。
2)見積もり力(=料金の不安をゼロにする力)
この業態での「営業」は、見積もりの段階でほぼ決まります。
価格が高いか安いか以前に、「何にいくらかかるかが分からない」と人は頼めません。
望ましい行動は、
- 料金表の提示(基本料金+オプション)
- 追加費用が発生する条件の明示(汚れの程度、分解範囲、駐車料金等)
- 作業範囲の線引き(ここまでは含む/ここからは別)
- 写真・動画等での事前確認(見積もり精度を上げる)
これができると、クレームも激減します。営業力=契約力であり、同時に防衛力です。
3)単価を守る力(値下げしない、値上げを言える)
完全独立を見据えるなら、最終的に重要になるのは「件数」ではなく粗利です。
FCの紹介案件は、最初はありがたい反面、単価や条件が固定されやすい場合もあります。そこから脱却するには、単価を自分でコントロールできる必要がある。
具体的には、
- “安さ”で勝負しない(相手を選ぶ)
- 価格の根拠を言える(作業時間、分解、薬剤、養生、保証)
- 断り文句を用意する(値下げ要求への対応)
- 高単価メニューを設計する(エアコン分解、レンジフード、セット割等)
単価を守れないと、疲れるだけで収入がいつまでも頭打ちな働き方になります。
4)リピート・紹介を生む力(その場で次が決まる)
この業態の理想は、広告に頼らずとも仕事が回る状態です。
その中心にあるのが、「リピートと紹介」。ここが営業力の核心です。
やることはシンプルで、
- 作業後に「汚れの原因」と「再発防止策」を説明する
- 次回の目安時期を伝える(3〜6か月後、年1回など)
- お客が管理できる形で残す(LINE、メモ、チェック表)
- 小さな提案を添える(浴室のカビ、換気扇、窓、ベランダ等)
売り込むのではなく、「困ったらまた頼みたい」気持ちにさせる。
これが“営業っぽくない営業”です。
5)見つけてもらう力(地域の検索・口コミ・露出の設計)
完全独立に向かうほど、紹介だけでは頭打ちになります。そこで必要になるのが「見つけてもらう力」。
これは広告費を大量投下することではなく、次のような地味な積み上げです。
- Googleビジネスプロフィール(MEO)の整備
- 口コミを集める導線(依頼後に自然にお願いできる台本)
- 地域名+サービス名での検索対策(最低限のページ作り)
- SNSは“映え”より実例と注意点(信頼の積み上げ)
この「露出設計」ができる人は、本部案件が減っても生き残ります。
伸ばす順番:最初に鍛えるべき営業力はどれ?
いきなり全部やるのは無理です。次の順番だと取り組みやすいでしょう。
- 信頼形成力(返信・清潔感・説明)
- 見積もり力(料金不安を消す)
- リピート設計(次回を自然に作る)
- 単価を守る力(値付けと断り)
- 見つけてもらう力(MEO・口コミ・地域露出)
この順番で営業力を積み重ねていくと、売上の土台が固まりやすい。特に1〜3が整うと、広告費をかけなくてもジワジワ収入が増えます。
まとめ:この業態の営業力は「口のうまさ」ではない
ハウスクリーニングで必要な営業力は、営業トークの上手さではありません。
安心・透明性・単価・再来・露出を設計する力です。
本部紹介があるうちは、営業力が弱くても食べられます。
でも将来、完全独立を見据えるなら、紹介に依存しないために、最低でも
- 見積もりで不安をゼロにできる
- 価格に納得させる
- リピートと紹介が自然に発生する
- 地域で見つけてもらえる
ここまでを自力で作れる必要があります。
逆に言えば、これができれば「雇われない自由」は現実になります。
体力勝負の仕事ほど、最終的に勝つのは「体力・根性依存」ではなく、業務設計の上手さです。